Vtuber とアレ②
前回から。
2017年末までに、キズナアイ・電脳少女シロ・ときのそら・ミライアカリ・富士葵らが登場し、さらにえのぐなど岩本町芸能社など「アイドルタレント」としてのVtuberが下地を作り始めた。
また、「のじゃおじ」によって「バーチャル美少女おじさん」≒「中身と外見の性別が異なる(狭義では美少女の見た目をしたおじさん)」が受け入れられる下地ができあがっていた。
ここら辺はにゃるら氏のエントリが発端となった記憶がある。
さらに12月9日にかの「輝夜月」がデビューする。
彼女が大きく注目されたのはその動画センスで、今までの「やってみた」とかから離れた、徹底的にナンセンスを貫き通している(つまり、中身は本当にどうでもいい)。
加えて、デザインが人気デザイナーのMika Pikazo氏であること、更に声質が独特で「首締めハム太郎」として大きな注目を浴び、やがて後々VtuberのダンスロボットダンスMAD旋風を巻き起こすMADが投稿される。
電脳少女シロなどでも作られている。
さて、こうして2017年中にデビューしたキズナアイ・電脳少女シロ・ミライアカリ・輝夜月・のじゃおじを総称して一般的に「四天王」と括られるようになった。5人だけど。俺は呼ばないけど。
遡るのがなかなか時間が掛かるので一部だけになるが、この時期は割と企業を超えてtwitterでリプライを飛ばし合っていた光景があった。
親分∠( 'ω')/
— 輝夜 月 🍤 (@_KaguyaLuna) 2018年12月29日
ライブおつかれさまっしたー!!
すっごいよかったー〜〜ー!!!
あげあげやった!!∠( 'ω')/ふおおおおおおおお!!!!🍤🍤
ぴょこぴょこ!∠( 'ω')/🍤🍤
そして年越しはミライアカリが配信をしていた。
個人Vtuberとしても、のじゃおじ(ねこます)を始め、のらきゃっとや霊電カスカなどが活動をし始め、じわじわとファーストペンギンが飛び込み始めていた。
2018年に入るとVtuberデビューが続々とみられるようになった。1月でぱっと思いつく限り、届木ウカ・もちひよこ・あっくん大魔王・絶対天使くるみ・ミディ・モスコミュール・乾伸一郎・ニーツ(VT-212)・げんげんあたりがデビューした。
(たぶんもっと多い。) おそらく今でも活動している人が多いから、記憶に残っているのだと思う。特に、この時期は「Vtuberと言えば3D」という風潮があり、届木ウカ・もちひよこ・モスコミュールらは3Dという個人で制作するにもモーションキャプチャするにも難しいところに飛び込むだけの度胸があったと言えるだろう。
あっくん大魔王や乾伸一郎らにしても、後々標準化するLIVE2Dを使ってVtuberとして飛び込んだ人々である。
もちろん、当時は2017年からの流れで動画投稿がスタンダードであり、動画作成の技術も必要であったことは言うまでも無い。
初々しいあっくん大魔王を見られる。
げんげん(源元気)は動画勢として、ネタに見えつつも「世界観の考察」を背景にしたシナリオのできが話題になった。
この多くを語らない「世界観考察」をさらにサブカルに仕上げたのが、2018年の2月末にデビューした鳩羽つぐである。
2018年の1月で思い出深いエピソードと言えば、ミライアカリの「1人紅白歌合戦とかつまんないやつやん……」
無い…無い…
— ミライアカリ(Mirai Akari)🦋 (@MiraiAkari_prj) 2018年1月12日
思いつか…無い…https://t.co/YYsOekWiTn
バタ_(:3 」∠)_ pic.twitter.com/Qyl23HgABB
からのキズナアイの動画投稿
【動画UPしました!】
— Kizuna AI@09/23「愛と花」 (@aichan_nel) 2018年1月12日
遅れてきた年末を今ここに!🤓
さぁ行ってみましょうーーー!ლ(´ڡ`ლ)✨💕#KizunaAI #YouTube https://t.co/DtIUJiZDWk
だろう。綺麗なネタ被りである。
さて、2018年の始めで一番大きな出来事といえば「にじさんじ」の始動だろう。
もとはiPhoneXのフェイストラッキング(表情認識)を使い、二次元イラストキャラクターを動かすアプリ「にじさんじアプリ」の販促のためにオーディションで声優を選ぶという方針だった。
にじさんじ所属ライバーがメインにする形態は今までの動画投稿に対して「配信」であるところが新しく、そのため、デビュー配信はYouTube LiveではなくMirrativeで行われいる。樋口楓や勇気ちひろらはMirrativeで活動を続けたが、静凛や月ノ美兎は早々にYouTubeLiveに移動している。
まあ、正直なところ、当時の自分は「企業でVtuberなら3Dだろうし、絵がうごいてる、雑談してるってただの生主だろ」と極めて否定的な態度だった。
そこで衝撃を受けることになったのが、月ノ美兎である。
話のギャップもさながら、適宜コメントを拾って実況に反映・ツッコミを入れる能力、「LINEニュースをスクショして待ち受けにする」、そもそものゲーム選択のセンスなど……「ただの生主ではない」ということをこれでもかと見せ付けられた。
「おるやんけ!」などについては、後々にユリイカ 2018年7月号で本人が語っていたが、「音MADにされやすいように」「バズるように狙って発言した」などの驚異的な先見の明が明らかにされている。
「おるやんけ」「わたくしで隠さないと」といった未だにミームとして使われている言葉は、この初期の月ノ美兎の実況を発端としている。その他、「きしめん」MADなど、インターネット老人に突き刺さった存在となった。
この時点ですでにタレント……というか、インターネットミームになる能力を見せ付けていた月ノ美兎は3月始めに登録者数10万人を突破しており、配信でビューから約40日という未だににじさんじ内ですらトップクラスの速度である(それも、今ほどVtuberという文化が広まっていなかった時期に)。
また、その特異的な立ち位置から漫画家・小林銅蟲の料理と「クリオネ」を食べる案件に加えて、にじさんじで初めて(というか、2Dから初めて)3Dとなってニコニコで公式番組を請け負うなど、これまでの「アイドル」的なVtuberの存在感を一転させた存在である。
月ノ美兎の放課後ニコ生放送局 - 2018/04/07 20:00開始 - ニコニコ生放送
ニコニコの配信に合わせて3Dになることを「受肉」、3Dのモデルを「肉の器」と表現した。やや意味が変容して現在ではVとしての肉体を得ること自体を「受肉」と呼んでいるが、元々は月ノ美兎の発言である。
NKさんには、本当に、本当に感謝しかありません…。初めてモデルを拝見した時は、まさか本当に受肉できるとは思っておりませんでした…。 https://t.co/kHnpoi0Vvr
— 月ノ美兎🐰 (@MitoTsukino) 2018年4月8日
こういった月ノ美兎の快進撃を受けたのと、アプリが配給できなかった(レベルが配給に耐えられないと評価されたらしい)ことから、にじさんじ(グループ)をマネジメントするいちから株式会社はアプリ開発からライバーマネジメントに舵を切ったという話がある。
……本当は2月に富士葵の案件とか猫宮ひなたのデビュー、イヌージョンの「応援ソング」、天魔機忍ver.G結成、ややネガティブな話だと「ぜったい天使くるみちゃんチャンネル削除・のっとり騒動(ミライアカリによる相互連絡カバー、あっくん大魔王の連絡など)」が起こったりしている。おめがシスターズも2月にデビューしてる……のと、他にもにじさんじがいろいろあったんだけど、文字数が多いので次回ちょっと触れます。たぶん。
以下にじさんじについて。
にじさんじは元々アバター開発だったことを含め、「プラットホームにこだわらない」ことが前提だったため、「Vtuber」ではなく「ライバー」と名乗っており、これは現在でも変わっていない。(もとは17Liveの配信者をライバーと呼ぶらしく、これを踏襲しているので、尚更「Vtuber」と呼んではいけない理由になっている)。
さらに言うと「公式ライバー」の呼称も2017年時点でイチナナが用いてまして、にじさんじが公式ライバーと初期メンバーを呼んでいたのもそれに準じていたのだと思いますhttps://t.co/MK9qcy5Ok3 (記事の下の方)
— 泉信行 (@izumino) 2020年6月21日
当初はMirrativeで配信しており、準備が出来たら順にYouTubeLiveに移動していたが、これはライバー(時に1期生・2期生)の自主的なもので、いちから株式会社としては配信用iPhoneXの1台を与えてただけであるとのこと。そもそも「気軽に2次元のアバターを着て配信出来る」が目的なので、それも当然である。
この時期に起こった(自分のような偏見)や、配信慣れしていないが故のイベント(遅刻や著作権侵害、"キャラ崩れ"と呼ばれるようなもの・実際にキャラやロールプレイが言われるように崩れているライバーはいない)が、現在でもアップデートされないで偏見として語られている。